子どもの独立をきっかけに食細りになることも
脂質や糖質の摂り過ぎ、メタボリックシンドロームなどに気をつけたい年代である『婦人公論』世代。それだけに、若い頃と比べて多少食事の量が減ったり好みが変わったりしていても、栄養が不足しているとまで考える人は少ないかもしれません。しかし、「栄養が不足している状態、つまり低栄養は年齢に関係なく起こります」と注意を促すのは、東京都健康長寿医療センター研究所の成田美紀さんです。
そもそも低栄養とは、活動に必要なエネルギー(熱量)と、筋肉や骨、内臓、皮膚などのもととなるたんぱく質が不足している状態を指し、大きく分けて二つのタイプがあるといいます。
一つは、エネルギーとたんぱく質の両方が不足しているケース。
「これは全体的な食事量が減っていると考えられます。体重が減り、痩せていきますから、栄養が足りていないのは一目瞭然でしょう」(成田さん。以下同)
もう一つは、エネルギーは足りているものの、たんぱく質が不足しているケースです。
「こちらの場合、体格は標準から太め。そのため、栄養が足りているように思われがちですが、実は筋肉量が少なく脂肪量が多い『隠れ低栄養』という状態になっています」
低栄養におちいる要因として、加齢によって食物を噛んだり飲み込んだりする咀嚼嚥下機能が低下し、食事がおっくうになり食事量が減ってしまうことがあげられます。
「そのほか、味や香りに鈍感になる、白内障で料理が黄色みを帯びて見えるなど、五感に関わる機能の衰えも食欲が落ちる一因です」
また、子どもの独立や配偶者との別れをきっかけに「孤食」の機会が増え、食欲をなくして栄養が足りなくなる人も多いそう。
「最近では、コロナ禍で外出や会食の機会が減っていることも、栄養が偏る人を増加させるのではないかと危惧しています。加えて、コロナという見えない病気と独りで闘わなければいけない心理的ストレスや孤独感が、食欲を減退させてしまうことに。栄養不足をくいとめるには、家族や友人とこまめに連絡を取り合うなど、人とのつながりを維持する努力も必要です」