「ここが日本航空の本社です」

三次の筆記試験が終わると、まもなく試験係が現われ、唐突に5人の女性の名前を呼んだ。

冒頭の竹田悠子はちょっと不思議に感じた。合格なのだろうか、まだ採点はおわらないはずなのに。5人はお互いに眼を見合わせたが、すぐに外に待っていた車に乗せられた。

いったいどこに連れて行かれるのだろうか。みな同じような気持ちでいるのは明らかだったが、言葉はなかった。緊張しきっていたのである。

車は発車し、5分も走らないうちに停車した。「ここが日本航空の本社です」と付き添ってきた社員が説明した。階段をあがって案内されたのは畳敷きの部屋である。「これが本社なのかしら」と悠子はちょっと拍子抜けした。

部屋のなかには中年の男性が二人いた。彼らは満面の笑顔で悠子たちを迎えた。

「おめでとう。あなたたちはスチュワーデスの試験に合格しましたよ」

それまでなにも知らされずにここまできた5人は驚いて顔を見合わせた。このとき同行したのが悠子のほかに、前述の伊丹政子、荒木佐登子、佐々木喜久子、土井玲子だった。

「まだ身体検査の結果がわかっていないけれど、とにかくみなさんは抜群の成績でした」と言われた。

そして、試験・招待飛行が八月二十七日に迫っていると伝えてきた。

占領下での日本航空の創設ということで、スチュワーデスについてはリッジウェイ最高司令官夫人の「査察」がある。そのために、その日に間に合うように制服をつくらなければならないから、今からさっそく制服の採寸をはじめる、というのである。5人はまた顔を見合わせずにはいられなかった。