子どもの頃病弱だったという下重暁子さんにとって、「死」は小学生のときから身近なテーマだった。日々の暮らしのなかで、旅の途上で、また書籍や絵画に触れるなかで死をイメージするという下重さん。それは同時に「このように生きたい」と考えることでもあったという(構成◎本誌編集部 撮影◎本誌写真部)

よりよく死ぬためにはどうすればよいか

2020年の春先、私は立て続けに親しい友人たちを喪いました。なかには、突然亡くなられた方も。訃報を聞いたとき、しばし呆然としたものです。自分も明日死ぬかもしれない。いつ死んでもおかしくない――そう思い、「死」と向き合おうと心を定めて書いたのが本書です。思い残すことなく旅立つために必要な「準備」を紹介しています。

私が最初に死について意識したのは7歳、小学校2年生のときでした。結核を患い、療養中だった私は、腫れ物にさわるように扱われました。外で遊ぶことも許されませんから、部屋の中にいる蜘蛛だけが友達でした。巣に獲物がかかるまでじっと待ち続け、ときが来たらパッと飛びかかる。その姿を見て、「待つ力」を学びました。死に際して慌てふためかず待つ、という姿勢はそれ以来持ち続けています。

病が癒えてからも、私にとって死は身近なテーマでした。50代のころ、つれあいの仕事に同行して中東に滞在したとき、砂漠に魅了されました。「死ぬなら砂漠で、砂に埋もれて眠りたい」とも考えるように。お墓など埋葬方法にこだわる人が多いですが、私は死にぎわを大事にしたい。本の中でも、絵画や風景などから「自分の死のイメージ」を作ることを勧めています。

『明日死んでもいいための44のレッスン』(著◎下重暁子 幻冬舎新書)