15日間相撲が見られたことの幸せ

私は仕事を続けながら、父、母、兄の病気や介護であたふたしている時にも、なんとか相撲を見たいと思っていた。平成10年に父が亡くなった難病の専門病棟には、長い闘病のすえ、離婚したり、家族や親戚の面会もなく、社会からも離れた人たちがいた。大きな部屋にテレビがあり、患者さんたちが懸命に相撲を見ている後ろで、休日には私も相撲を観戦していた。

私には取組以外にも見どころがある。土俵下に落ちた力士により審判の親方が転ぶ「土俵下の惨劇」、相撲に行司が巻き込まれる「行司の惨事」、行司の装束と土俵上の力士の廻しの色合いを見る「土俵上の偶然の色彩美」など、である。千秋楽も朝乃山と正代の相撲に巻き込まれて、立行司の式守伊之助が土俵から落ちて上がれず、代わりに木村玉治郎が勝ち名乗りを上げた。

コロナ禍、地震などの災害、テレビが壊れるなど、相撲を見られなくなる危機感を私はいつももっている。15日間相撲が見られたことの幸せをかみしめ、見せてくれた方々に感謝している。

今場所をまとめた格言は、10日目にNHKテレビの解説をした尾車親方の一言「相撲は取ってみないとわからない」。

あなたは、自分の土俵でどんな相撲を取りますか?

相撲の聖地、ここ両国に賑わいが戻る日が待ち遠しい(撮影◎編集部)
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