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照ノ富士の苦闘と努力の結果
大相撲春場所は、大関復帰への目標と強い心を持った関脇・照ノ富士が12勝3敗で優勝した。優勝は3回目で、殊勲賞も獲得した。優勝旗を師匠である審判部長の伊勢ヶ浜親方から受け取る姿に感激し、私は傍にあったバスタオルで涙をぬぐった。
照ノ富士は、平成27年7月場所に23歳で大関に昇進したが、膝の悪さと病気のため序二段まで落ちた。そこから這い上がってきた。21場所ぶりの大関復帰は確実である。この大相撲史上初の出来事を「奇跡」と言ってはいけない。照ノ富士の苦闘と努力の結果なのである。
千秋楽の相手は大関・貴景勝。トップを行く照ノ富士が負ければ、前頭12枚目の碧山、同星になった貴景勝との3人での優勝決定戦になる。貴景勝は一見やる気満々に見えたが、照ノ富士のほうが自信満々の顔をし、落ち着いていて、勝つ顔をしていた。
わかりやすく説明する。元部長が定年退職後に会社にやって来て、自信満々に今の会社の状況を批判している。現在の部長が「僕は懸命に働いているのに、うるさいなぁ」と思いながら耐えているような顔を貴景勝はしていた。もちろん元部長は照ノ富士である。
問題は今の大関陣だ。11日目に鶴竜が引退したことに刺激され、「俺たちがやらなければ!」と覚醒したように3大関が揃って勝った。しかし、14日目に朝乃山と正代が負けて、また情けない状況に。結局、優勝はカド番だった貴景勝にゆだねられた。
千秋楽で正代は朝乃山に負け、誰かがまたカド番という、もはや「大関の負の掟」を確実にしてしまった。しかし、朝乃山は勝って良かった。7勝7敗の大関が千秋楽で勝つと、本人たちは「そんなことないよお」と言っても、厳しい相撲ファンは「大関同士の譲り合い」と思うからだ。カド番の場所での優勝は感動を呼ぶ。来場所、正代は優勝してカッコイイところを見せれば、くまモンだって喜ぶ(正代は熊本県出身なので)。