「マザーズ・ダイアローグ・カフェ」に集まった人の発言を、漫画家のヤマダカナンさんがまとめたホワイトボード。ボードを見ながら、さらに意見交換を重ねていく(撮影:筆者)

フラッシュバックは、妊娠・出産時や育児期に起きやすい

そんなももこさんは1年前、同じ経験をもつ仲間とのつながりを求めて「マザーズ・ダイアローグ・カフェ」という活動を立ち上げた。幼少期に虐待などを体験した母親たちが、子育てや生活の困りごとを語り合う場だ。育児中の人、離婚して子どもと離れて暮らす人など参加者の背景はさまざまだが、皆、子育てにつらさを感じてきた。

見学させてもらった日、都内の貸し会議室には、ももこさんと、ともに活動を立ち上げた漫画家のヤマダカナンさん、ほかに2人の母親が集まった。この日のテーマは「どんなときに過去の経験が思い出されるか」。ももこさんが進行役として話を進め、ヤマダさんが皆の発言をホワイトボードにまとめていく。

たとえば、軽いフラッシュバックが起きるのは、「保育園にお迎えのため自転車をこいでいるとき」「子どもが一人でポツンとしているとき」。もっと強い症状が起きるのは、「夫や男性上司が大きな声を出したとき」「娘がお風呂で泣いたとき」「きょうだい喧嘩を見たとき」など、自身が受けた虐待経験と結びつく場面が並んだ。子どものきょうだい喧嘩は、両親の喧嘩を思い出させるという。

臨床心理士で、原宿カウンセリングセンター所長の信田さよ子さんはこう話す。

「フラッシュバックは、妊娠・出産時や育児期に起きやすいんです。それも自分と同性の子どもが引き金になりやすい。『親は自分にひどいことをしたのに、私はこの子をかわいがろうとしている。アンフェアだ!』という気持ちが湧いてくることもあります。それで自分がされたような虐待をしてしまい、子どもが泣いたり息をのんだりするのを見て、はっと我に返る。そう話す方もいます」

後編につづく