ハンジョー・オールスターズの誕生
管楽器専門店には防音のスタジオがあります。そこに入って、3人でサックスを吹かせてもらいました。サックスやクラリネットなどのリード楽器は、初めての人が吹いても音は出ます。店長さんは嫌な顔もせず、吹き方や音階の出し方を教えてくれるので、調子に乗っていつまでもブフォブフォ吹いていました。
そのうち店長さんが、「そろそろ、帰らないといけないので…」と遠慮がちに言いました。気が付かなかったのですが、営業時間はとっくに終わっていたようです。3時間もサックスを吹いていると、手放すのが名残惜しくなります。それに3時間も吹いて、何も買わないで帰るのも申し訳ないという気持ちもありました。
結局、3人とも買いたくなって、上杉さんとぼくはテナーサックス、鈴木祐弘さんがアルトサックスを購入することになりました。全部セルマー製だったので、総額百数十万円になります。DACとしては、おそらく思ってもみなかった売り上げになったはずです(その時、お金はどうしたのか忘れましたが)。
そのあと、イラストレーター・装丁家・エッセイストの南伸坊さんも、ぼくらにならってセルマーのアルトサックスを買ったので、ハンジョー・オールスターズ(Hand-Joe All Stars)というバンドを作ることになりました。楽器は一流ですが、まともに吹ける人は1人もいないのに、ライブをやりたいと上杉さんが言い出し、ヒカシューというバンドの巻上公一くんが協力してくれて、渋谷のLa.mamaというライブハウスで、ハンジョー・オールスターズ1回目のライブが開催されました。楽器を買って2ヵ月後のことです。
中学生の時に鼓笛隊をやっていたカメラマンの滝本淳助くんがドラムスで入り、同じくカメラマンの山崎邦彦さんがクラリネットで入り、巻上くんもトランペットで入ってくれました。他にもステージに上がって演奏した人が何人かいたと思います。なぜか客席は満員で、立ち見の人もいました。