イラスト:小林マキ
年を重ねても動ける体でいるためには、筋肉を鍛えておくことが不可欠。最も手軽にできるトレーニングは「歩くこと」です。とはいえ、ただやみくもに歩けばいいというものではありません。ウォーキングのポイントを教えてもらいました(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/葛西由恵《インパクト》)

50代からはじまる大殿筋の衰え

「40代から全身の筋肉は毎年1%ずつ減っていき、50代になると、筋肉の衰えはより顕著に表れます。お尻が小さくなった、垂れてきたといった自覚症状があったら、すでに危険信号」と、JCHO東京新宿メディカルセンター・リハビリテーション士長で理学療法士の田中尚喜さんは注意を促します。

お尻の筋肉(大殿筋・だいでんきん)の減少は、もともと男性より筋肉量が少ない女性のほうが早く起こるそう。

「大殿筋は姿勢を維持するのに重要な役割を担っています。そのまま衰えていくと、70代になって腰が曲がったり、変形性股関節症や変形性膝関節症といった体の異変を招いたりするおそれがあるのです。これを食い止めるには、歩くこと。まずは一日30分でもよいので歩きましょう」(田中さん。以下同)

とはいえ、ただ漫然と歩くのはNGです。田中さんは、正しい歩き方についてこうアドバイスします。

「大股で腕を勢いよく振って歩くのがいい歩き方だと思い込んでいる人が多い。しかし、大股歩きは膝を曲げて歩くことになり、肝心の大殿筋がほとんど使われないのです。それどころか、上下左右の体のブレが大きくなりやすいため、膝や腰に負担がかかり、体を痛めてしまうことにもなりかねません」

若いときなら多少の故障はすぐに回復しますが、中高年以降は無理は禁物、と田中さんは釘を刺します。

「そもそも『歩く』という行為は、人間の基本的な生活行動です。健康な人が少し歩いただけで、どこかが痛くなる、あるいは数十分の歩行で疲れてしまうというのはおかしな話。心当たりがあれば、歩き方に問題がある可能性が高いのです」