2019年の「時忘れじの集い」打ち上げ会場で、正蔵さん一家と(写真提供:ねぎし事務所)

弱音を吐けると気持ちが楽になる

いまの私は、嫁たちがいなかったらとても生きていかれません。美どりと泰葉という娘が2人いるけれど、嫁のほうがいい。嫁がいちばんです。娘たちはそれぞれ20代で家を出ましたけど、ゆっ子ちゃんがお嫁に来てくれて37年。娘と暮らした年月より、嫁と過ごした時間のほうが長いのですもの。さっちゃんも結婚してしばらくは同居しましたし、嫁同士も仲良しなのがうちの自慢ね。

昨日も、さっちゃんが焼きたてのクロワッサンを「お母さん、食べますか」と持って来てくれました。でもポロポロこぼれるもんだから、「私、こういうの嫌いなのよ。あんぱんみたいに食べやすいパンがいいわ」と言ったの。そしたらゆっ子ちゃんが「お母さんは口が悪いから。さっちゃん、ごめんなさいね」ってすかさず謝ってくれて。

ゆっ子ちゃんは毎日、料理の本など見ながら一所懸命に食事を作ってくれます。でも私、美味しいまずいもはっきり言うの(笑)。嫁も「そんなはずないですよ!」って言い返すし。そうして言いたいことを腹や胸にためないでぽんぽん言い合えるのも、情が通った間柄だからでしょう。

この歳になると、毎日どっかしら痛かったり痒かったり、調子が悪くなるものです。私の姑も80歳を過ぎた頃から、「香葉子、腰が痛いのよ」「頭がふらふらするの」って、毎朝必ず言ってきたものです。当時は内弟子が大勢いて、朝ごはんの支度だけでもてんてこまい。

でもハイハイと話を聞いて、「後で一緒にお医者さんへ行きましょう」と答えれば、姑も安心してくれる。私もいま、同じことを嫁に言っては、「お母さん、ちょっと待ってください」と答えてもらうと何だか少しほっとします。弱音を吐ける相手がいるというだけで、気持ちが楽になるんですね。

ですから私が今後もし寝付いて、お尻の始末をしてもらうようになっても、嫁にだったら頼めます。娘でも平気ですけれど、でも嫁がいちばんって思います。