「歳をとるまでに多少のお金を貯めるのもいいけれど、『情の貯蓄もしましょうね』って私はよく言うんです。」

 

家では「おふくろ」、外へ出れば「おかみさん」

娘たちはいずれ家を出るものと思っていましたが、正蔵は15歳で父親の弟子になり、三平も大学生の時に夫の弟子のこん平(故・林家こん平さん)に入門して噺家になりました。そうなると、家では「おふくろ」でも、一歩外へ出れば「おかみさん」。私も、ほかのお弟子と同じような気持ちで接してきました。

いま、正蔵は古典一筋に勉強を重ね、落語協会の副会長としてよく務めています。三平も『笑点』のレギュラーをはじめ、いろいろな番組で皆さんに可愛がっていただいています。

親子でもきょうだいでも個性が違うのですから、昭和の爆笑王と呼ばれた父親の背中を無理して追う必要もないでしょう。それぞれいい大人なのに、いつまでも父親と比べられるのはちょっとかわいそうと思っています。

真面目な三平などは「僕にはまだ足りないところがある」なんて申しますし、まあもうちょっと八方破れにできればいいかなと思うこともありますけど。「きみはきみの道で一所懸命やればいいじゃない」と言いながら、ときどきダメ出しもしています。