植本 そのうち書くだけでは心の平静を保てなくなり、誰かの助けを借りたくて、専門家のカウンセリングを受けに行きました。夫ががんの末期で闘病していた頃です。「病人なんだから責めてはいけない」と思いながらも、これまで私の悩みに向き合ってくれなかった彼への憎しみも募り、こんな気持ちのままでは夫を見送れないと思って。
カウンセリングで対話を重ねるうちに、私の苦しさの根本が母にあることや、母に抱いていた違和感がよりはっきりしてきたんです。
信田 私もカウンセリングをしていて、植本さんのように、夫のことで悩んでいたはずがいつの間にか母の話になっていたというケースを、いくつも経験しました。話しているうちにそれまで気づかなかった家族への思いを発見し、記憶が蘇ったりしますから。
植本 カウンセリングに通っている間は文章をほとんど書きませんでした。語ることで心が落ち着いたんですね。今はもう受けていませんが、苦しいときの対処法をひとつ増やせた気がします。母との関係を冷静に見られるようになって、私からメールのやりとりを復活させました。
母娘問題ならではの難しさ
信田 お母さまと完全に絶縁しきれなかったのはなぜでしょう。メールを送ることで、また距離が縮まってしまうという不安はありませんでしたか。
植本 それが、自分でも説明しにくいのですが……。
信田 母娘問題ならではの難しさですね。よっぽど意識して離れないと、ふとしたことでまた近づいてしまう。
植本 それを自覚してからは、私にとって負担にならない距離感を探る方法を考えるようになりました。今は、メールではなくLINEにしています。