乱雑でものが多い=俳句の材料が豊富
この「リモコン」や「新聞紙」は句材といいます。文字通り、句を作る材料です。俳句を作るというのは、脳の高尚な作業ではなく、何があるかを見つめる作業と言い換えてもいい。ダイニングテーブルの上に醤油差しの輪染みを見つける人もいれば、DVDの山がある人も。これらのひとつひとつが句材です。ですから、家の中が乱雑でものが多ければ、それだけ俳句の材料が豊富だとも言えます。
目の前にあるものから、五音を見つけていくのが、俳句への近道。言葉をパズルのように組み合わせるだけなのです。
台所も句材がたくさんある場所です。調理器具も食器も食材も、すべて句材になります。
たとえば「フライパン」は五音。もうこれで、俳句の3分の1が手に入りました。では、お宅のフライパンはどんなもので、いくつありますか? もし大小3つあるとしたら「フライパン」「大小三つ」と、十二音の俳句のタネが手に入ります。あと足りないのは季語です。
さて、あなたの台所はどんな感じでしょう。明るい場所で、窓を開けたらふわっと風が入ってくるような台所ですか? もしそうだったら、春なら「風光る」、夏なら「風薫る」という季語を使うとこんな感じになります。
〈 風光る大小三つフライパン 〉
〈 風薫る大小三つフライパン 〉
どちらも窓を開けたら向こうにお庭の緑が見えて、風が吹き込んでくるような感じになります。でもそんなに明るい台所ではなかったり、気分が暗い場合は、別の季語を探せばよいのです。たとえば夏の季語に「黴(かび)」があります。
〈 黴臭し大小三つのフライパン 〉
なんだか、古い木造の家を連想させますね。もしかしたら子どもたちが育ちざかりの頃は、3つのフライパンがフルで活躍していたのかもしれません。でも今は夫婦二人で、3つのフライパンの出番がないのかも。会話が少ないちょっと寂しい夫婦の風景が感じられたり(笑)。たった十七音から、さまざまな情景が思い浮かびます。
俳句のタネを見つけたら、そこにどういうニュアンスをつけたいかを考えて、季語を選ぶ。それが一番の初歩。どうですか? 難しくありませんよね。
俳句の基本ルール
●季語を必ず1つ入れる
●表記は自分で決める 【例】匂う におう にほふ