いつでもどこでも楽しめる
昨年来、皆さん新型コロナウイルスの影響で家にいる時間が増えていると思います。人と会えず鬱々としている方も多いはず。そんな方に、いつでもどこでも楽しめる趣味としてぜひ俳句作りをお勧めします。特に家の中には、俳句のタネが無限に。それを探して俳句を作ると、日々の暮らしがとても豊かになると思うのです。
私が「家で俳句」を提唱し始めた理由をお話しします。私は25年以上、俳句の種蒔き運動を続けてきました。これは、俳句の楽しさや手軽さを伝えるために講演でお話をしたり、投句の場を提供したりすることです。
小中学校への出前教室から始め、子どもたちに教える立場の先生方、その次が医療や福祉の現場への普及でした。その後、テレビ番組なども通してより多くの方に俳句に親しんでいただく機会が増え、おかげさまで3世代、4世代で楽しめる流れができました。
そうした活動のなかで、私はいつも「季語の現場に出ていきましょうね」とお話ししています。俳句の季語は知識ではなく、体験だからです。たとえば梅の季節には梅が咲いているところに出かけ、花がどんな匂いでどんな色か、どんな光があり、どんな風が吹いているのか。季語を体験することで実感が深まるのです。
ある日、主催する句会ライブが終わった後のサイン会で、先頭に並んだ方に「またいらしてくださいね」と申しました。するとその方が、「親の介護をしているので、そうそう思うように外出できません。今日も夫が仕事を休んでくれたおかげで、来られました」とおっしゃった。それを聞いて、家を空けられない状況の方もけっこうおられると思い至ったのです。
またこんなこともありました。私は地元の愛媛県・松山市で20年ほど俳句のラジオ番組を担当しています。投句する方が身の上や俳句の背景を書いてこられることがありますが、そのなかに「足の悪い私は自由に季語の現場に行くことができません。私には俳句の勉強をする資格がないのでしょうか」といったお便りがあったのです。
人はみな、年をとると、だんだん外出が難しくなる。だったら、出かけずに家にいても俳句を楽しめる方法を提案しよう。子どもから人生のフィナーレの時期まで楽しめるのが俳句の魅力。そう思い、家で俳句を作る方法をアドバイスするようになりました。