『韓国映画・ドラマ わたしたちのおしゃべりの記録2014~2020』著◎西森路代、ハン・トンヒョン(駒草出版)

日韓両国の現代史が立ち上がってくる

韓流ドラマやK−POPから始まった日本での韓国作品のブームは、昨今では映画や小説、エッセイまで含めたトータルな文化現象になっている。映画ではポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が2020年に外国語作品として初めて米国アカデミー賞作品賞を獲得し、世界的な水準にあることがあらためて示された。

そうした出来事が起きていた2010年代の半ばから2020年までの間に、韓国映画やドラマに詳しいライターと社会学者が重ねたトークセッションの記録は、日本における韓国作品の受容史であり、それらを求めた「わたしたちの同時代史」でもある。

グローバルに評価されると同時に、きわめてエスニックでローカルな性質も残している韓国のコンテンツはなぜ魅力的で、日本の観客にもつよく訴えかけるのか。フェミニズムや政治的公正さ(ポリティカル・コレクトネス)、社会的テーマと娯楽性、日本と韓国におけるそれらに対する受容の在り方をめぐり、専門も視点も異なる二人は予定調和的に同調することなく、相違は相違として残したままセッションが繰り返される。むしろそのことによって立体的に、この間の日韓両国の現代史が立ち上がってくるのだ。

『パラサイト』や『はちどり』、『タクシー運転手』、『お嬢さん』といったキーになる映画作品は繰り返し言及される。軍政から民主化へ、そして短期間に高度成長とグローバル化を経験した隣国の「圧縮近代」のなかで作られた諸作品が意味するものは、同じ時代を停滞のなかで過ごした「わたしたち」の国との対照によって、いっそうくっきりとしてくる。本書をきっかけに、さらに多くの「対話」が生まれることを期待したい。