実はあたしは変温動物なのだ。いや、そんなわけないんだが、たぶん人より快適温度の幅が狭く、つねに暑すぎたり寒すぎたりしてこまめに着たり脱いだりするから、家族にそう言われる。そしてうるさがられる。かぶって着るタイプのセーターは脱ぎ着が面倒なので着なくなった。

若い頃から薄着だったが、50代になってホットフラッシュやら何やらでどんどん暑がりになっていき、更年期のまっ最中なんて、冬でも半袖の小学生のような薄着で通してきた。やがて閉経もばっちりしおおせて、もうだいぶ経つ。でも暑がりは更年期のときのまま、高止まりで60代に突入したわけだ。

ところが今年は何か違う。灯油ストーブを新規購入し、というのも20年ほど使ったやつが壊れたからだが、新しいのは屋外でも使える強力なやつで、それをいつもつけているようになり、家の中はここ数年なかったくらい暖かくなり、その前に置いたカゴの中で猫が丸くなって寝ているようになった。クレイマーには電気カーペットを出してきた。もう1匹の猫がそこで長々と伸びていた。

今年の冬は寒かった。調べたのだ、あたしが日本に帰ってきてからの冬の気温を。2018年初冬から2020年晩冬まで2回の冬は温暖で、零下に下がった夜は数回しかなかった。しかし今年は零下がざらで、零下四度五度という夜も数回あった。

コロナで東京に行かなくなり、公共交通機関を使わなくなり、家の中で仕事をしているか山や河原を歩いているかだから、暑いときはくそ暑く、寒いときはくそ寒いのだった。しかも昨夏から、気温が29度ぐらいに下がった深夜に散歩する習慣をつけちゃったもんだから、厳寒の頃、零下三度や四度の中、あたしはぶくぶくに着ぶくれて、クレイマーとふたりで闇の中を歩きまわった。