人間はいくつになっても結局変わらない
近田 ところで、それがどう手話に繋がるの?
博士 俺は漫才師として言霊はあると思っているんですけど、その対極を描いた「カンセツ話法」という筒井康隆さんの短編があって。宇宙人が地球人と交流を持つ話で、言語がこれなの。(関節を鳴らす)
清水 ポキポキ、で会話?
博士 だから地球人も全員、関節での話法を練習しだすんです。
近田 ああ、「間接話法」と思って聞いてたら、「関節話法」なのか!
博士 商談や外交レベルの交渉になると、普通じゃないポキポキの応酬になるから、最終的に地球人の大使の骨や関節がボキボキに折れる話なんだけど。
近田 くだらねえ。(笑)
博士 要は、「言霊を持たない」ところにこのSFの面白さがあって、近田さんに、言語だけに縛られる必要はないよねって言いたかったんです。
近田 実際、スマホを「電話」として使う機会は少ないでしょ。各自がスマホを持つようになったとき、みんな「電話」より「手紙」へ流れたってことですよ。かつて、未来の象徴としてテレビ電話があったけど、結局Zoomなんて仕事で使うだけじゃん。会話より、メールを送るコミュニケーションのほうがラク。これが本音なんだと思う。
博士 近田さんはすでにパソコンを卒業して、執筆も演奏も、スマホでこなしてるんですよね。
近田 もうとっくだよ。iPadとiPhoneがあれば全部間に合うから。あ、でも去年、助成金が出るので、またパソコン買ったけどね。
博士 使わないのに、買った理由を聞いてもいいですか。(笑)
近田 ちゃんと理由があるんだよ。iCloudでのバックアップは、なにかあっても補償されないでしょ。だからパソコンのハードディスクが必要になったの。使おうと思えば音楽制作に使うわけだし。まあ、たいていのことはiPhoneで済んじゃうのが現実なんだけどね。
清水 原稿も?
近田 うん。原稿も音声入力。
博士 今日、誌面に載せられずにカットされた話は、近田さんの死後、俺に書かせてくださいよ。
近田 いや、生きてたって俺は平気だよ。自分が言ったことは「言ってない」とは言わない。嘘つくの、面倒くさいじゃん。俺はさ、とにかく正直に生きたいから。
清水 近田さんはすごいね。月刊『明星』からずっとそう。当時も、あんな辛口な人はいなかった。
近田 自分のことはよくわからないけど、人間ってさ、いくつになっても結局変わらないものですよ。だいたい俺の生命線は長くてさ、300歳まで生きると思うから、博士、死ぬのを待ってると書けないよ。
清水 今日は古い友達が元気すぎるとわかって、勇気をもらった!
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