音楽を通じて、貧しい子どもに光を

ラン・ランは社会貢献活動として2008年に「ラン・ラン国際音楽財団」を設立し、次世代のピアニストの育成や、最先端技術を導入した音楽教育に力を入れている。特に彼が気にかけているのは、音楽に触れることさえできない環境にある、貧しい子どもたちのことだ。


2008年頃、アメリカの公立学校の一部では、予算がつかずに教師が不足していたため、音楽の授業がまったく行われていませんでした。生徒たちが音楽に接する機会を取り戻したい、と考えたのが、財団の活動を始めるきっかけです。10年経った今では、アメリカ国内の40校で「ラン・ラン・メソッド」による音楽の授業が行われています。

席に座って音楽を鑑賞するだけの授業ではありません。タブレット端末や3D映像などの最新テクノロジーを使い、まるでゲームをしているように、音楽の基礎を楽しみながら身につけることができるのです。

財団が支援しているニューヨークのハーレムやブルックリン、フィラデルフィアなどの学校には、貧困層の生徒も多くいます。しかし、彼らは音楽に触れ、人と共同で作業することを通して社会性を身につけ、ほかの学科でもよい成績がとれるようになっていきました。

私の親しい友人、指揮者のグスターボ・ドゥダメルは、幼い頃、郷里のベネズエラで「エル・システマ」と呼ばれる、貧しい子どものための音楽教育を受けていました。今では世界的な指揮者ですが、彼もまた、「音楽との出会いで人生が変わった」子どもだったのです。

私自身も、ピアノの演奏を通じて変わることができました。中国にいた頃は、「ナンバーワンになる」ことだけを目標に練習していましたし、15歳でアメリカのカーティス音楽院に入学した時には、「世界中すべてのコンクールで優勝したい!」と思っていたくらい。でも、私の師のゲイリー・グラフマン学長に、「勝つのを目的にするのではなく、芸術性を磨きなさい。学ぶことをもっと大切にしなさい」と諭されました。この言葉は、その後の音楽家人生にとても役立ったのです。

このほか、私の財団で特に才能があると認められた子どもたちには、教師や学校を紹介し、奨学金も支給しています。財団の卒業プレゼントは、ニューヨークのカーネギー・ホールでのリサイタルなのですよ。両親が私にもたらしてくれた、ピアニストとしての成功。この力を、若い世代のためにもっと使っていきたいと思っています。
 

 

 


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