アジアから世界へ音楽を広げたい

もう1曲、CD2枚組の「デラックス・エディション」版に入っているのが、宮城県仙台市出身の作曲家・菅野よう子の「花は咲く」(日本盤のみのボーナス・トラック)。ラン・ランはこの曲を初めて聴いた時、東日本大震災のチャリティー・ソングとして作られたことを知らなかったという。


私は13歳の時、仙台で開かれたピアノコンクールで優勝し、大きなチャンスを得ました。滞在中はたくさんの方々が親切にしてくださり、思い出深い土地なので、11年に大地震で仙台が被災したと聞いた時は、大きなショックを受けました。それほど、自分にとって大切な場所になっていたのです。その年の秋に仙台を訪れ、コンクール出演者の練習場所だった学校やホールを訪ねて回ったのですが、被害の大きさ、津波の恐ろしい力を痛感しました。

「花は咲く」は美しいだけでなく、深い癒やしを感じる曲です。後になって大震災の復興のシンボルとなった曲だと知り、さらに心が大きく動かされました。

今回のアルバムのデラックス・エディション(日本盤)には、全30曲中、日本の作品と中国の作品を各2曲、韓国の作品を1曲収めています。それには理由があります。ピアノはヨーロッパで生まれ、普及した楽器ですが、今ではアジアのほうがはるかに演奏人口も多く、市場も大きくなっている。それならば、今こそ、アジアの作品を世界の人に聴いてもらう絶好の時期でしょう。アジアから世界へ音楽を広げたい。そういった希望を持って選びました。