静寂の美をたたえる遠藤

しかし、巴戦が見たかった。

結び前の相撲で、西前頭8枚目の遠藤が大関正代に勝ったら3人が12勝3敗で並び、巴戦になったのに、残念だ。

今場所は闘志で顔も体も真っ赤な仁王のような照ノ富士、気合いが最高潮になると怒りと不満が混じった子供顔になる貴景勝、静寂の美をたたえる遠藤、この個性ある3力士の攻防を見られたのに……。カド番を13日目に脱出した正代が大関の力をこんな時に発揮して遠藤を押し出すとは……。もっと前から、正代は心を整えて、技を見せてほしかった。

私が若かった頃、三賞の中で力士がもらうと一番嬉しいのは「技能賞」といわれていた。今場所の技能賞は、東前頭筆頭の若隆景が9勝6敗(2回目)、遠藤が11勝4敗(4回目)で受賞した。

敢闘賞と殊勲賞はなしだが、遠藤にあげてほしい。

大相撲は準優勝や3位はないので、「場所を盛り上げたで賞」とかあればいいのに。

優勝経験のある西小結大栄翔に期待していたのだが、力を発揮できず6勝9敗と負け越した。西前頭2枚目の翔猿(とびざる)にも期待したが、動き回りが勝ちの的にはまらず5勝10敗と負け越し。しかし、来場所もしつこく期待することに決めた。