実家のお金にたかる人間たち

ここで私は、認知症の症状が現れてから父が契約したお金のことが心配になり、先物取引会社のA氏に電話をかけた。すると電話口の男が次々と替わる。「ちゃんとあなたの父親の意志でやっている」とすごんでくる輩もいて、最終的には実家に説明に来ると言う。

日時も決まったが、なぜか彼らが来ることはなかった。あとからわかったのだが、父の認知症のことを知った叔父が、私に一言もないまま、勝手に東京にあるB総合法律事務所に父の取引の契約解消について依頼していたのである。

B弁護士は、最低最悪だった。これまでの多額の取引の解決法として、裁判をするのではなく和解金を払うと言ってきたが、先物取引社のA氏たちと結託して、なんとその和解金を横領したのである。かかわった人間の仲間割れから発覚したのだが、その額1億円以上。

B弁護士は数年前に亡くなったと聞いたが、本来なら逮捕され、弁護士資格を剥奪されていたはず。それなのに、当時は謝罪だけで、「私はもう80近くの年寄りです」などと泣き落としに出てきた。兄に報告すると興味を示し、私の代理人として交渉し始めたが、結局当事者からの全額返済にはほど遠いまま、時効となってしまったという。

私の支えでなんとか一人暮らしを続けていた父だったが、ある日、室内で転倒し、救急車で運ばれて入院。これがきっかけとなり、有料老人ホームに入所した。そして私はようやく父の成年後見人になることができたのである。

それにしても、兄の冷たさはひどいものだ。ずっと「対岸の火事」とばかりに見物していただけである。仕方なく電話をかけたことが4、5回あったが、出るなり不機嫌。そして内容を聞くやいなや、激怒。「電話なんかかけてくるな」と怒鳴りつける。兄妹間のトラブルやパワハラは、泣き寝入りするしかないのが悔しい。

父が施設に入所したとはいえ、週に一度は様子を見に行かねばならないし、「発熱した」「肺炎のようだ」「入院させる」などの連絡が入るたび、電車を乗り換え片道1時間半かけて駆けつけなければならない。しかも、3ヵ月に一度ほど一時帰国する兄が、「実家の庭の草をどうにかしろ」「ベランダに水が溜まっている」などと命令してくるのだ。

<後編につづく


※婦人公論では「読者体験手記」を随時募集しています。

現在募集中のテーマはこちら

アンケート・投稿欄へ