(イラスト:おおの麻里)
家族から高齢者への虐待は、年間約1万7千件も確認されているそうです。高齢者虐待にも、さまざまなパターンがあり「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」「介護・世話の放棄・放任」 に分けられています。なかでも、虐待されている高齢者のうち、7割の方に認知症の症状がみられるそうです。被相続人が認知症になった場合、一方に悪意があれば、相続にも影響を及ぼします。守谷さち子さんの場合も、父の認知症から家族の間のトラブルが起こり――

<前編よりつづく

封印していた事実について、初めて兄にぶつけた

認知症の父の介護をめぐり、兄とのトラブルを抱えていた頃、私は二十数年の結婚生活に終止符を打ち、一人実家へと戻った。時を同じくして、兄夫婦も日本に帰国することになっていた。そのタイミングで、兄は自宅のリフォームを勝手に決め、その代金700万円を父の預金から出させていた。

しかも、それ以前には、父から孫6人(私の子は2人)への生前贈与を画策し、中学時代の友人というC税理士を抱き込んでいた。

久しぶりに会った兄嫁は、兄の背後から上目遣いに私を睨みつけていた。私は兄夫婦が海外にいた間、兄宛ての郵便物を、同じ都内の私の自宅に転送してもらい、一時帰国する兄の都合に合わせて届けていた。兄嫁が病気になった時はお見舞金を渡した。私一人で父の世話もした。お礼の一言ぐらいはあるかと思っていたが、まったくなかった。

こうして同じ敷地内に、二世帯での暮らしが始まったが、兄嫁は約束を守らない、忘れる、嘘をつく。そのうえ、兄の目の届かないところで、私に小学生レベルの意地悪を繰り返すようになった。

たとえば、前回話していたことを「覚えていない」と翻すのは日常茶飯事。敷地内で私の姿を見かけると走って逃げていく。また、父の家の金庫を開ける必要がある時に立ち会ってもらう約束をしていたのに、当日になってすっぽかされた……など、兄嫁の大人げない行動をあげればきりがない。