私は反論書を送ったが、いくら待っても兄からの連絡はなかった。しばらくして突然、相手の弁護士の事務所で私と兄、兄の弁護士、C税理士の5名で話し合うまでに何とかこぎつけた。ところが、これも直前に勝手に立ち消えとなってしまったのである。理由は明かされなかった。

ここに至り、兄が強欲で無恥でいる限り、いつまでたってもこの状況は変わらないということが、いくらなんでも私にもわかってきた。

昔から外面がよく、見栄っ張りの兄だ。高級車、高いワイン、豪華な食事、旅行など、贅沢な生活をするにはお金がいる。周囲の人間にいいところを見せたいに違いない。その兄の姿が目に浮かぶようだ。兄と、兄をとりまく鉄面皮な輩たちとのやりとりにほとほと疲れてしまった。兄が相続した実家は、すでに売却され、更地になり、ほかの家が建っている。

私はもう、謝罪などという高望みはしない。ただ、お墓にだけは責任を持ってほしい。お墓参りも維持管理もする気持ちがないのなら、墓じまいをして、しかるべき場所に永代供養してほしい。このままでは、将来、無縁墓になりかねない。それが心配でたまらない。

今も両親を思い出さない日はない。そして、兄とこのような関係になってしまったことを心から申し訳なく思う。覚悟を決め、自問自答しつつ、人に知られたくなかったことを書いた。恥ずかしいことばかりだ。しかし、兄にとってこの内容はなんら問題ないはずだ。兄いわく、「コメントするに値しない、じつに些細なことばかり」でしかないのだから。

<電話口の筆者>

「ずいぶん昔の、人にお話しするのもはばかられる内容ですが、自分の人生に一区切りつけるため、誰かに読んでいただきたいという思いで書きました」と守谷さん。実際はもっと複雑な出来事もあったけれど、枚数に収まらないため割愛したとのこと。

「いつまでも恨みつらみを引きずることなく、これからは前向きに生きていきたい」ときっぱり。実家を離れてからは、一人静かに暮らしています。

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