直接会わずとも、手紙で一言真摯に謝ってもらえればよかった。それですべて水に流そうと思った。母もそう望んでいるに違いないと。

1ヵ月近く待っても返事が来なかった。もう一通書いて出した。するとやっと見覚えのある筆跡の封書が届いたが、差出人の名前すら書いていないお粗末さ。内容は、拍子抜けするほど簡単なもので、「特段の反応をするまでもない内容。コメントしない」とある。そして私からの手紙は「何度送られてきても一切開封しない」とあった。

父の世話や、大小さまざまなトラブルの処理を私に丸投げして、協力するどころか怒鳴りつけるだけに終始したこと、自分に有利な相続を画策したこと、その他いろいろ、それらはすべてコメントするにも値しないレベルというわけだ。兄は、トラブルを解決しようとしない小心者なのに、私にだけはどこまでも居丈高である。

私は考えた末、D弁護士を訪ねた。彼は私が持参した遺産分割協議書に目を通すと「お金は一部取り戻せるし、謝罪もさせる」と言った。だから依頼した。ところが、それから1年半が経っても、事態はほとんど変わらなかった。

ただ謝ってほしいと言っているだけなのに

それにしても、その後届いた兄側の弁護士からの回答書はひどかった。こちら側が送った書簡に対し、3ヵ月以上経って届いた回答書には、無視もできないからと、無理やり何とか体裁を整えたというレベルの、ずさんなものだった。

許せないのは、父が車をぶつけた件を私の捏造としたことだ。そしてそれ以上に許しがたいのは、兄の私への性的虐待について謝罪を強要することは、「自分に対する一種の嫌がらせであり応じられない」とした点である。

犯罪の加害者が、年月を経て被害者であると主張しているのである。私はただ謝ってほしいと言っているのだ。そして、兄からの返済金についても大きな曲解がある。