私は臨終には間に合わなかった

次に、兄と税理士は、成年後見人の私に父のゴルフ会員権の名義を兄に変更するよう求めてきた。700万円のリフォーム代は、家庭裁判所に提出したが、兄の税理士が絡んでいた生前贈与については、なにやら家裁から厳しい叱責を受けていたらしい。なのに、会員権の名義変更まで要求してくるとは。私が断ると、また兄は激高した。

今までさんざん理不尽な要求や怒りを受けたうえ、兄嫁に意地悪までされている私は我慢できず、幼い時からの兄の行為に対し、「訴える」と言った。

そしてしばらくすると、兄夫婦は、私に一言もないまま引っ越していった。お金をかけてリフォームした自宅に兄たちが住んだのは、わずか半年ほどだった。

その頃から、施設にいる父はかなり弱ってきていた。そして、冬のある日、真夜中に危篤の連絡を受け駆けつけたが、臨終には間に合わなかった。兄夫婦が先に到着していて、約1年ぶりの再会だった。兄嫁はしくしく泣いている。以前から思っていたことだが、兄嫁は役者になれば大成しただろう。