みんなが喜んでくれるなら、それでいい
日本一周から5年後、長年パートをしていた会社の倒産で職を失い、一念発起して惣菜の行商を始めた。魚屋で働いていた頃、煮物作りを担当していたのでお手の物だ。するとこれが評判に。「ごはんと味噌汁つけたら食堂やれるよ」とまわりに勧められ、68歳で自宅の自転車置き場だった小屋を改装して食堂をスタートさせた。
近年は、テレビなどで紹介されたことで県外からの客も増えたが、地元の一人暮らしの高齢者の支えになっていることがうかがえる。「出前もしているよ。知り合いが、足や腰が痛いから届けてほしいというので、昨日も3軒配達したよ」と住吉さんが教えてくれた。
「常連さんは80歳くらいの人が多いかなぁ。そういう人には、余ったおかずは持たしてやるんだ。ここで知り合って、結婚した60代の人もいるよ」と語るはつゑさんは嬉しそう。
だが、子どもたちからは、人にそんなに親切にしても、倒れた時に何かしてもらえるわけじゃないよ、と釘をさされているそうだ。
「かまやしないよ。みんなが喜んでくれるなら、それでいい。そのためにやってるんだから。お金がなければ、ないような生活をすればいいんだし。自分のことを自分で決められる自由さえあれば。いまが人生で一番幸せだよ」
人に喜んでもらうことがパワーの源、そう言い切るはつゑさん。昨年の緊急事態宣言中は店を閉めていたが、今年はこういう時だからこそ、頑張ってなんとか続けていきたいと笑った。