上:お店のスタッフ・住吉竹美さんと二人三脚で/下:旅先での記念写真も壁一面に飾られている

50ccの原付バイクで、3ヵ月半かけて日本一周の旅へ

57歳の時、はつゑさんは思い切った行動に出る。50ccの原付バイクで、3ヵ月半かけて日本一周の旅に出たのだ。当初、夫から反対されたが、引き下がらなかった。

「小学校にも行かせてもらえなかったから、遠足も修学旅行も行ってない。だから一人で修学旅行したいなぁって。離婚してでも行きたいよって言ったら、自分の退職金から100万円くれたんだよ。子どもたちも、お金出してくれた」

500万円を持って旅に出たはつゑさんは、長崎県雲仙普賢岳の被災者のために300万円を寄付するなど、あちこちで寄付をする。「コンビニのおにぎりでも食ってればいいや、と思ってね。身体が丈夫だし、また働けばお金になるから」。

一方で人のやさしさにも触れる旅だった。九州のある町では、宿屋がどこも満室で8軒に宿泊を断られたが、ガソリンスタンドの店主が家に泊めてくれた。

「あぁ、こういう親切な人もいるんだなぁって。みんなに助けられて生きているようなもんだよ」。その思いが、赤字が出ても500円で食堂を続けている原点だという。