小笠原洋子さん「ケチケチ生活とは、人生後半を快適に生きるための哲学です」(撮影=本社写真部)
「最期は孤独死もいとわない」というほど、ひとり暮らしが好きと微笑む71歳、エッセイストの小笠原洋子さん。節約主義を貫いてきた《ケチ師範》が、おだやかな老後生活の極意を教えてくれた(構成=上田恵子 撮影=本社写真部)

老後が心配になったのが「ケチ道」のはじまり

ムダを省き、できるだけお金を使わず、だけど心豊かに楽しく暮らすーー。ケチケチ生活とは、人生後半を快適に生きるための哲学です。私の場合40代になって老後の先行きが不安になったのが、「ケチ道」のはじまり。

その頃、てっきり自分は70歳くらいで死ぬだろうと思って年金の受給開始年齢も決めていたのに、すでにその歳も過ぎて現在71歳。東京郊外にあるURの高齢者向け賃貸住宅で、ひとり暮らしを楽しんでいます。部屋の間取りは3DK、家賃は5万5000円ほど。以前は分譲団地に住んでいたのですが、固定資産税を払うのが納得できず6年前に売却。今の団地に引っ越してきました。

倹約上手だった親の影響もあり、子どもの頃から節約が大好きで、お小遣いをもらっては郵便局に行き、コツコツ貯金。ものを買うより数字が増えるのを見るのが楽しかったのです。大人になると根っからの節約主義に拍車がかかり、20代の頃は1日300円で暮らしていたことも。友達はいましたが、ひとりでいるのが好きなので交際費もかからず、それで十分でした。

大学卒業後に京都の画廊に就職し、のちに東京の美術館に転職。30代になり、さすがに1日300円では生活できず、1日1000円にシフトしました。これは限度額を増やしたというより、「本気でケチ生活をしよう」と決意した金額だったのです。体が弱かったこともあり、「将来、年金は生活費と家賃で消えてしまうし、病気になることだってある。少々貯金があるくらいでは足りないぞ!」と焦りを感じるようになったこともきっかけでした。

「人生後半は自由に動ける立場でいたい」と、45歳でリタイアした後は、アルバイトや原稿の執筆で生計を立ててきました。将来への不安から、40歳を過ぎたときに個人年金に加入。公的年金を受け取るまでのつなぎとして60歳から70歳まで受け取れるよう設定しましたが、現在は公的年金のみが振り込まれています。

年金が振り込まれたら1万円ずつ引き出して、すべて千円札に両替し、「使えるお金」を用意します。この「使えるお金」が、1日1000円。主に食費に使い、薬代や雑貨なども範囲内に収めます。食が細いので、食べなかった分は冷蔵・冷凍。その保存期間を考えて、食材や惣菜の値引き品はあまり買いません。