「舞台を支えてくださる人たちの思いに応えるためにも、もっと精進したいと思うようになりました。」(撮影:大河内禎)
父は中村錦之助、祖父は四代目中村時蔵、大叔父に俳優・萬屋錦之介。梨園に生まれ、迷いなく歌舞伎俳優の道へと進んだ中村隼人さんも、今や27歳。映像の世界へも活躍の幅を広げる《歌舞伎界のプリンス》の芸への思いは──(構成=大内弓子 撮影=大河内禎)

背負う責任が重くなってきた

『婦人公論に長いインタビューをしていただくのは8年ぶりになります。振り返ると、当時は20歳の誕生日を迎える前で、自分はまだまだだと焦っていた時期でしたね。先輩たちに通用する芝居ができていないし、人を引きつける力も備わっていない。すべてに悔しい思いをしていた毎日でした。

じゃあ今はどうなのかと問われると、やっぱり常に悩んだり迷ったりしていて、根本は変わっていないような気がするんです。ただ、乗り越えなければいけない壁が8年前より高くなっていて、悩みのレベルも上がってきている。ちゃんと成長できてはいるのかもしれないですね。

なかでも大きく変化したのは、背負う責任が重くなってきたことです。とくに、2018年初演の新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』で、(二代目坂東)巳之助さんと一緒に座頭を勤めさせていただいたことは、一気に自分を変えてくれたと思っています(巳之助さんはナルト役、隼人さんはサスケ役)。

何しろ座頭というのは、もしもその公演が失敗に終わったら、責任を全部負わなければいけない立場。これは(四代目市川)猿之助さんに教わったのですが、一つの公演にどれだけの時間やコスト、人の力がかかっているのかを、ちゃんと把握しておかなければならないので。そういったことも意識するようになりました。

公演にかかわってくださっている人数を改めて認識して、そこで初めて、皆それぞれに家族がいて生活があって、それが僕たちにかかっているということに思いが至りました。そして、そんな人たちが全力を注いで作ってくださっている舞台に対して、自分は真摯に向き合えているだろうかと、改めて考えたんです。舞台を支えてくださる人たちの思いに応えるためにも、もっと精進したいと思うようになりました。