「歌舞伎以外の大先輩とじっくり芝居をさせていただいたことは、僕の糧になっています。」

その最たるものが、2年前に出演したBS時代劇『大富豪同心』というドラマです。NHKの連続ドラマで主演をさせていただくというのはやはり大きなことでしたし、歌舞伎以外の大先輩とじっくり芝居をさせていただいたことは、僕の糧になっています。

演じたのは、放蕩三昧の孫の将来を心配した祖父に、同心として就職させられる卯之吉。武道も走るのも苦手で、同心にはまったく向いていないものの、その超然とした態度を周りが誤解することで、勝手に事件が解決されていくという痛快娯楽時代劇なんですが、その役が似合っていてとてもいいと、皆さんに言っていただけたんです。

歌舞伎と違って映像は一期一会の世界。共演した方とはもう二度と会わないかもしれない。そんな方々が言ってくださることには嘘がないと思いますから、自信になりました。

このたびそのドラマのパート2の放送が始まります。今回は、卯之吉だけでなく、将軍の弟・幸千代との2役を演じて、卯之吉が幸千代の替え玉になったり、さらに周りを振り回すことになります。僕もどんなふうに映っているのか楽しみなのですが、将軍を(二代目尾上)松也さんが、そして幕府の老中を幸四郎さんが演じてくださっているんです。

松也さんもいろいろなことに挑戦なさっている方ですし、そういった憧れの先輩方が、自分が主演を務める作品に出てくださるのは本当にうれしいことで。幸千代役のときは僕が幸四郎兄さんを「無礼者!」と怒鳴るシーンもあるのですが、カットがかかった途端、幸四郎さんが、「隼人、わかってるだろうな」と凄んで僕をイジって現場を笑わせてくださったりして。おかげで僕も肩の力が抜けましたし、ドラマでも助けていただきました。