まずは失敗を恐れずにやってみる

もし「こんなもん食えねえや」って言われたら「じゃ、自分で作ってよ」って言っちゃうかもしれない。作る人と食べる人って、いい関係じゃないとね。特別に手伝ってくれなくても、いいコメントを言ってくれる人がそばにいると、自信もついてくるし、料理の上達にもつながる。

だから新しいアイデア料理も、悪いけど夫を実験台にすることがよくあります。テレビや雑誌で発表するとなると、どうしてもみんなに「おいしい!」って言ってもらいたいから。

アイデア料理と言っても食べられるものどうしを組み合わせるんだから、そんなに目茶苦茶なことにはならないと思うんです。

「らっきょうのチョコレート和え」はまずそうだけど、それだってもしかしたら好きな人がいるかもしれない。ものすごく甘い、とか、ものすごく辛い、とか、そんなふうにならないように気をつければ、たいてい大丈夫。まずは失敗を恐れないでやってみることだと思います。


「五秒ヴィシソワーズ」

例えば、「五秒ヴィシソワーズ」は私が和田さんにはじめて教わった組み合わせ。

トマトジュースと牛乳を一対一で割る。たったそれだけ。お好みで塩胡椒を入れてもOKね。冷たいままだとおいしいヴィシソワーズ(冷製スープ)のでき上がり。バジルの葉っぱをちぎってのっけて、オリーブ油を数滴おとせばレストランの味。牛乳が濃厚牛乳だったら完璧超ウマです。

あたためてもいいけど、トマトの酸味で分離してもろもろになることがあります。トマトジュースのメーカーによって、きれいなスープができる。

子どものアイデアも馬鹿にできません。長男がまだ小さいとき、「タマゴヤキニカルピチュイレテ」って言ったんです。

『家族の味』(著:平野レミ 絵:和田誠/ポプラ社)

 

卵焼きにカルピス? まさか! と私は思ったけど、子どもの言うことは聞いてあげようと、溶き卵一つにカルピスを大さじ一杯入れて混ぜて、フライパンにバターを溶かして、卵焼きを作りました。子ども向きの甘い卵焼きになって、これがおいしいの。