結婚式をせずに、とりあえずステーキを焼いた

たしかに私はお料理に興味があったけど、その頃はまだまだ食材のことなんか何にも知らなかった。

つき出しに小さな魚の干したのが出て、それに目が二つとも片側についてたのね。「何この魚、この形?」って驚いて言ったら、彼は「左ヒラメに右カレイだから、これはカレイだよ」って教えてくれたの。「すごい物知りの人だ」と思って、私はすっかり尊敬しちゃったんだけど、あとでそう言ったら「誰でも知ってることだから、そんなことで尊敬しないで」だって。

そのあとしばらくして結婚したんですけどね。結婚式なんかしないで、私が彼のアパートへ行って、近所のスーパーで買ったステーキの肉を焼いて、夫が「ウエディング・マーチ」のレコードをかけて、二人で食べて。「おいしい」って言ってくれたから、これはお母さんに教わった焼き方のおかげでしょうね。

それから彼が言った言葉は、「死ぬまでにあと何千回レミのご飯が食べられるかな」だったの。「あ、この人、食べることに命かけてるのかな。たいへんな人と結婚しちゃった」と思いましたね。次に思ったのは「それならきちっとやればいいんだ、よし、やっちゃおう」でした。

結婚式なんてしないでステーキを焼いた(写真提供:写真AC)


夫は絶対にまずいと言わなかった

夫が「外で人に会ったとき、毎日レミさんのユニークな料理を食べてるんですかって聞かれて返事に困った」と言うことがあります。私もテレビで作ってるような料理を毎日作ってるわけじゃありません。納豆と海苔(のり)とか、きんぴらごぼうとか、目玉焼きとか、ほうれんそうのごま和えとか、ごくごく普通のものを出すことが多いです。

でも自分のアイデア料理を作ることが好きだから、新しいレシピのものを、黙って置いておくこともあります。

そんなときは、ほかに普通のおかずが並んでいても、夫は「ん? これは何だ」と必ず先に箸をつけるのね。食いしん坊で好奇心が強いから。

それで、ちょっとくらい変なものでも、絶対に「まずい」とは言いません。遠回しに「おもしろい味だけど、ちょっとコクが足りないかな」とか言い方が優しいの。そうすると私ももっとやる気が出て、「よし、ここをこう直して、もう一度作ってみよう」って気持ちになるでしょ。