『家族と国家は共謀する サバイバルからレジスタンスへ』角川新書

男女格差が先進国で最も大きなこの国で

20年以上前、ある総合誌に「被害者も加害者も当事者性がない」と書きました。「夫婦なんてそんなもの」という人に、「殴る人はDV加害者で、殴られる人は被害者である」、つまり当事者であると自覚してもらいたいと思った。そこが出発点です。

ところが被害者の自覚は、屈辱的である一方で、自分には責任がなく、「悪いのはすべて加害者のせい」に転嫁できる心地よさもあります。「被害者は正しい」という思いが、新たな攻撃や差別意識につながってしまうことも。そうならないためにも被害者は苦痛を認識し、被害の経験を語って聞いてもらい、ちゃんとケアされる必要があります。

さらに、被害からの回復を指す「サバイバル(生き延びること)」や、回復力を意味する「レジリエンス(被害に対する強さ、しなやかさ)」に加えて、「レジスタンス(抵抗)」という言葉を新たに提案してみました。「家族は良きものだ」として疑わない世間の常識に、攻めの言葉、政治的な言葉によってその先にある解決法を示したかった。

この本は「家族の話はおんな子どものもの」と考えてきた男性にも読まれているようです。でも、男女格差が先進国で最も大きなこの国で、男性も家族との向き合い方や人間関係の持ち方が問われていることに気づかなければ、この先、人も家族も国も立ちゆかない。そういう岐路にあると思います。