五月場所で2場所連続優勝を果たした照ノ富士。翌日の会見で「必死にやってきたことが結果につながった」と語った(写真提供:共同通信社)
7月4日、名古屋場所が幕を開ける。ファンならずとも熱い視線を注ぎたくなるのは、相撲界の歴史が大きく動く、そんな予感の高まる場所だからである。(文=佐藤祥子)

照ノ富士「一日一日を大切にしている」

最大の注目は、大関照ノ富一日一日を大切にしている」の綱取り。元大関が、膝のケガや内臓疾患で序二段まで番付を落としたものの、今年三月場所後に再び大関に復帰したのだ。これは長い大相撲史上でも初の快挙。劇的な復活ドラマは、土俵の外でも大きな話題となった。三月、五月場所と連続優勝を果たした照ノ富士なのだが、優勝の喜びを胸に秘め、決してその表情は緩めない。

「膝にいつ爆発するかわからない爆弾を抱えている以上、いつ相撲が取れなくなってもおかしくない。

と、悲壮感さえ漂うなかでの綱取り挑戦だ。

以前は「やんちゃな大関」といわれるほどにフランクだった照ノ富士が、土俵に復帰してから日を追うごとに言葉少なになっていった。部屋の兄弟子である安治川親方(元関脇安美錦)は、そんな弟弟子をこう見ている。

「正直、照ノ富士はもうダメかもしれない、と思ったこともあった。でも稽古に対する姿勢も人が変わったように貪欲に。彼にとっての相撲は『人生を懸けるもの』になっていったんだと思う」

「大関での優勝またはそれに準ずる成績」が昇進条件。2場所連続優勝を果たしたいま、その勢いと《玉砕覚悟》の気迫をもって、かなりの高確率で横綱昇進が実現しそう。「太く短く生きたい」との人生観どおり、人生を懸けた勝負に出る。