宇良「異能力士が再び場内を沸かすか」
若隆景のほかに期待が高いのが明生だ。今や珍しい存在でもある中学卒の《叩き上げ》であり、鹿児島県奄美大島でのびのびと育った明生は本名も「川畑明生」。相撲の盛んな奄美大島の相撲クラブで「メイセイ! メイセイ!」と呼ばれていたことから、四股名を「明生」にしたという。
照ノ富士と同期生で、11年5月に初土俵を踏み、コツコツと番付を上げて18年7月に新入幕。左腕のケガで十両に2度落ちるものの、スピード感溢れる四つ相撲を研き、三月場所では大関正代、貴景勝を破り、初の敢闘賞を受賞した。「三賞の賞金で、父親が欲しがっていた釣り船を買ってあげたい」という孝行息子でもある。
五月場所では、前頭二枚目の自己最高位で大関朝乃山に土を付け、勝ち越し。名古屋場所での初の新三役昇進を確実にした。現在も新型コロナウイルス感染防止のために出稽古が禁止されている相撲界だが、元横綱朝青龍を叔父にもつ豊昇龍と同部屋で、切磋琢磨する毎日を送っている。
また、《居反り》などのアクロバティックな技を見せ、小兵の異能力士として人気を博していた宇良が、幕内の土俵に帰ってくる。
17年3月に新入幕して人気を呼んだが右膝の靱帯断裂の大ケガで6場所連続休場し、番付を三段目まで落とすことに。ようやく復帰するも再度同じ箇所を断裂し、5場所連続休場という地獄を味わった。19年十一月場所で序二段の土俵に復帰すると、約1年で十両まで番付を戻す。先の五月場所では十両優勝を果たし、実に3年半ぶりに幕内の土俵に返り咲くことになるのだ。
「一番つらかったのは、(膝を)再断裂した時。復帰は半ば諦めていましたけど、運がよければ……との思いで復帰しました。まさか幕内に上がれるとは思っていなかった」と満面の笑みを見せた宇良だった。
そのほか、五月場所では関脇として成績が振るわなかったものの、次代の大関候補として名を上げる隆の勝、叔父譲りの負けん気が魅力の豊昇龍など、新世代がメキメキと頭角を現し、世代交代の新風が吹く大相撲界。新横綱誕生となるか、横綱白鵬の動向は? 若手力士たちの活躍ぶりも楽しみな名古屋場所は、《力のもののふ》たちが暑い尾張の地で数々のドラマを見せてくれそうだ。