大道マルガリータさん(撮影=本社写真部)
2022年の初場所千秋楽で、横綱・照ノ富士を破って3度目の優勝を決めた関脇・御嶽海関。2018年7月場所で幕内初優勝を決めた際の、母・大道マルガリータさんのインタビューを、『婦人公論』2018年9月11日号で掲載している。

御嶽海こと大道久司(おおみちひさし)さんは、2015年2月に出羽海(でわのうみ)部屋に入門し、同年3月に初土俵。以後、とんとん拍子に昇進し、2018年入門4年目で幕内優勝という快挙を達成した。そんな彼に「母ちゃんのほうがアイドル」と言わしめるのが、フィリピン出身の美しい母、マルガリータさん(48歳・当時)だ。初優勝の時、故郷、長野県木曽郡上松町(あげまつまち)で暮らすマルガリータさんを取材した記事を一部再掲する。(構成=篠藤ゆり)

イエス・キリストの誕生日に生まれた子ども

御嶽海関の初優勝は、現在の優勝制度が確立された1909年以降、長野県出身力士としては初の賜杯となった。江戸時代に活躍した伝説の力士、雷電為右衛門(らいでんためえもん)以来のスター力士の登場とあり、地元は大フィーバー。初優勝後の夏巡業では、長野市に凱旋し、6000人が出迎えた。

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優勝が決まった名古屋場所は、初日と2日目、5日目、中日、千秋楽と計5回、地元の後援会のバスツアーで行きました。バスツアーは毎日出ているんです。朝10時くらいに集合して、観戦後、夜帰ってくる。みんなで行くのは楽しいよ。負けた時は、帰りのバスは「しーん」(笑)。

東京行きのバスツアーも出ていて、2018年の初場所で横綱・鶴竜関に勝った時なんてすごかった。興奮して、声をあげて、お祭りみたい。みんなの笑顔が忘れられません。

もちろん長野巡業もバスで行きましたよ。お客さんがいっぱいで、熱気もすごかった。みんなが「御嶽海!」「御嶽海!」って言ってくれて。でもなぜか私と一緒に写真を撮りたいと、大勢の人が並んで、驚いた。ずっと笑ってたから、顔が疲れたよ(笑)。もうヘトヘト。

でも「これからだよ」とも思う。そう、これからが大事。

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フィリピンのガールズバンドの一員として来日したマルガリータさん。その時、名古屋で出会ったのが、後に夫となる大道春男さんだ。20歳で結婚、2年後、フィリピンでひとり息子・久司さんを里帰り出産した。しばらくフィリピンで子育てをし、息子が3歳の時日本へ。以降、ずっと上松町で暮らしている。

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久司が生まれた夜はね、12月24日、家族でミサに出かけて、ブタの丸焼きとかクリスマスのご馳走をいっぱい食べました。そうしたら夜中に突然、背中が痛くなって。出産予定日は1月だったし、子どもが生まれる時は普通、お腹が痛くなるでしょう。陣痛だなんて思わなかった。でもすごく痛い。母を呼んだら、「えっ、もう生まれるの?」と。

あわてて病院に行って、25日の朝5時50分に生まれました。ものすごい安産、早いよね。しかも、フィリピンではイエス・キリストの誕生日に生まれた子どもは、お産の費用がタダ。すごく親孝行な子どもです(笑)。生まれた時は3000グラム。結構ちっちゃいでしょ。今は167キロだからね。ほかの子と比べると、脚の長い、細長ーい赤ちゃんでした。