「練習以外の時間を有効に使いフィジカルを高めて差をつけないと、ライバルたちに追いつくことはできません。練習を6時間すれば、1日の残りは18時間になります。僕はこの時間をどう使うかが重要だと考えました」

6年のギャップを埋めるために

僕が陸上競技を始めたのは、大学1年生の夏から。小学校時代から独学で自分なりのトレーニング理論を構築し、スポーツには自信がありました。そこで、「何かひとつの競技で日本一になりたい」と考えて選んだのが陸上でした。

しかし、中学生から陸上をスタートした人と僕とでは、最初から6年の差があります。相手はその年数分の筋力をすでに体に備えた状態で、さらに高みを目指して大学に入学してくる。

陸上は主にフィジカルで勝負するスポーツです。練習以外の時間を有効に使いフィジカルを高めて差をつけないと、ライバルたちに追いつくことはできません。練習を6時間すれば、1日の残りは18時間になります。僕はこの時間をどう使うかが重要だと考えました。

同じ時間を過ごすなら、自分が一番早く回復して次の練習ができるようにする。もしくは1年を通して疲労度を軽減し、練習の強度や頻度を高めることができれば、6年の遅れを取り戻せるのではないか……。

そのためには、いかに良質な睡眠をとるかが重要なカギとなります。そこで、高校時代からとっていた睡眠のデータをもとに、さらに実験と分析を繰り返しました。意図的に睡眠に変化をつけ、1日に2時間睡眠を3回とってみたり、3時間、3時間、2時間と分けて8時間寝てみたり。

また、1日6回のコンディション測定の際に50m走のタイムを計って、ベストな状態の何%くらいのパフォーマンスができているかを比較しました。それにより、どんな条件下ならいいタイムが出るかが一目瞭然のデータが入手できたのです。