イラスト:毛利みき
やたらとエネルギッシュな義理の親。元気でいてくれるのはいいけれど、振り回される家族は大変。煙草を吸い、好き嫌いも多く、風呂も近所付き合いも嫌い。自己主張が強く、わがまま放題だった姑を変えたのは、80歳を過ぎて出会ったデイサービスの「彼」だった

ピンピンコロリのお手本のような人

姑を40年間見てきた。昨年92歳で亡くなったが、臨終の直前まで頭は冴え、足と口は達者だった。まるでピンピンコロリのお手本のような人。しかし、これまで世間で言われてきた長生きの秘訣や常識とは真逆の日常だった。

煙草は吸う、運動はしない、常に不機嫌、笑わない、風呂が嫌い、気が短い、食べ物の好き嫌いが多い、腹八分目では満足しない――。かかりつけ医に通院する以外、外出はほとんどしなかった。「出かけて知り合いにでも会ったら面倒だわ」と、理由が明確。

自己主張が激しく近所づきあいを嫌がり、訪ねてくる友達もいない。一日の大半を自分の部屋で過ごし、ソファに横座りしながら四六時中テレビを観ていた。いや、居眠りしている時間のほうが長かったかもしれない。何十年も連れ添った舅が最大のストレスだと、はたから見てもわかった。

声にはハリと勢いがあり、まるで舞台女優のようによく通る声で、家のどこからでも私を呼んだ。血圧が少し高めと言って薬を飲んでいたが、それ以外は持病もないのに家事雑事を一切しない。立ち居振る舞いは機敏でやたらと元気。家の中に女王蜂が君臨しているようだった。