東ちづるさん(右)と池上季実子さん(左)
ドラマでの共演をきっかけに意気投合した、東ちづるさんと池上季実子さん。そのお付き合いは10年に及びます。明るく華やかなイメージのお二人ですが、時には心が大きく揺らいだり、深く落ちこんだりしたこともあったそうです。後編は「若さ」を求められる芸能界についてから――(構成=篠藤ゆり 撮影=本社写真部)

〈前編よりつづく

おばあさんの役が楽しみだった

 最近、つくづく考えることがあって。日本の芸能界では、「若い」ことが何より重視されているじゃない? 男性は年齢を重ねても尊重されるけど、私たち女性はキャリアをあまり認められていないようで、「劣化した」だとか「もう上がり」だとか言われがちでしょう。

池上 うんざりするほど。

 この先、仕事は減っていくいっぽうだなって考えるのよ。

池上 たしかにそう。

 それなら「若さ」を求められることから距離を置きたいなと思って、グレイヘアにしようと決めました。今はまだ途中だけれど。

池上 実は、昨年中止になった舞台の『八つ墓村』で、おばあさんの役をやる予定だったの。私は「女優としてのチャンスだ」と思っていたわけ。こういう役もできるんだとインパクトを与えたかったし、精神的にも、年を取ることを怖くない自分に切り替えられるんじゃないか、と。

 何歳くらいの設定?

池上 70代か80代。

 それは見たかったなぁ。私もこの前、ドラマで70代の役をやったけど、ああいう役が来るようになってちょっとうれしかった。

池上 去年やるはずだった舞台は、ほかにもシェイクスピア劇や現代劇などジャンルが幅広くて、私としては理想的だと思っていたのよ。

 それが全部なくなったら、そりゃあ気持ちが落ちるよね……。ネガティブ思考とかそういう問題ではないと思う。気持ちが落ちるほうが、むしろ健全。

池上 そうか、なんだかホッとした。

 今日、ここに来ることができたということは、かなり心が回復しているってことよね。

池上 11月に出た舞台がきっかけだと思う。小さな劇場で、舞台にまだ慣れていない若い人たちが多かったのね。最初はどう仕上がるのかなと不安だったけど、その子たちが毎日懸命に稽古する姿が、落ちていた私を初心に戻してくれたの。「やってよかった」と心から思えた。