「この年になると、私が『やりたい』と決めたら、何も言われない。」(池上さん)/「いざ還暦を迎えてみたら、いい意味で『諦める力』がついているし、自分に対しても寛容になれている気がする。」(東さん)

胃がんの手術を公表した理由

 若者たちと舞台に立とうと思えたのは、年齢を重ねて精神が自由になったからじゃないかな。

池上 たしかに。若い頃のほうが、周りからの制約があったり、事務所の意向で自由に仕事が選べなかったりしたかもしれない。この年になると、私が「やりたい」と決めたら、何も言われない。

 私はずっと、還暦になるのが楽しみだったの。私たちが若かった頃の芸能界は今よりもずっと男尊女卑の場所だったし、何か意見を言ったり、意思を表明したりすれば「強いねー」とか「怖い」とか揶揄されて。でも、「60過ぎたら何をしても許されるはず」と密かに思っていた。(笑)

池上 わかる、わかる。

 いざ還暦を迎えてみたら、いい意味で「諦める力」がついているし、自分に対しても寛容になれている気がする。年齢とともに体は衰えるし、死に向かっていくわけでしょう。それをすべて面白がれるかと言えば、そうはいかない。でもこれまで生きてきた過程があり、楽しいこともつらいことも経験したから、今の私がある。

池上 ちぃちゃんは、旦那さんの病気もあったしね。

 11年前にジストニア痙性斜頸と診断されて、最初の2年間は寝たきりの状態だった。その後だいぶよくなって、今は車いすで生活しているし、車の運転もできるようになったから。よくここまで来られたな、と思う。

池上 そしてちぃちゃん自身も、今年の春、胃がんの手術をしたことを公表したじゃない。明るく話していたから、驚いたわよ。

 実は公表するかどうしようか迷って、夫にも相談したの。週刊誌とかにスクープされるよりも、自分の言葉でちゃんと伝えたほうがいいと思ったので、ああいう形になりました。発覚した時も、悲愴感はまったくなくてね。お医者さんには、「『東京2020 NIPPON フェスティバル』の仕事をしていて、進行性ならば今後のことに影響する。はっきり言ってください」と、テキパキ(笑)。幸い初期発見で、術後の経過も順調です。