通称「ドリームチーム」を命名したとされる雑誌『Sports Illustrated』(Time Warner Inc.)。著者私物(写真:中央公論新社)
1976年のモントリオール大会以来、45年ぶりの五輪に臨むバスケットボール日本男子代表。現役NBAプレイヤーの八村塁や渡辺雄太を有し、過去最強とも言われるメンバーで7月26日にスペイン戦を迎える。一方、日本におけるバスケットボールの歴史を振り返れば92年のバルセロナ・オリンピック開催時に起きた大ブームを思い出す読者もいるのではないだろうか。雑誌『Boon』(祥伝社)、『UOMO』(集英社)で長く編集を続けてきた小澤匡行氏は「それまでスポーツ用品だったスニーカーがファッションに取り入れられたきっかけとしてそのブームの影響は大きい」と指摘する。

『SLAM DUNK』とバルセロナ・オリンピックが巻き起こしたバスケブーム

1980年代後半より各メーカーがテクノロジー主体の派手な演出をメディアに打ち始めたことで、アメリカ同様、国内のスニーカー人気は加速し始めていた。その最中である1990年、『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて『SLAM DUNK』(井上雄彦・著)の連載が始まる。

『SLAM DUNK』についての細かい説明は不要だろう。若者にとってリアリティーのある高校バスケットボールを舞台に、主人公の桜木花道を中心とした湘北高校バスケット部員の成長や、ライバルたちとの交流を描いた青春スポーツ漫画だ。

登場するキャラクター設定が実に巧妙だった。

実在するNBAプレイヤーの特徴やプレイスタイルが落とし込まれていた上、それぞれの着用するシューズがリアルに描かれ、かつパーソナリティーまで表現していたことで、フィクションとは思えないほどの現実味が付与されていた。また県大会1回戦負けが常だった弱小高校が、インターハイまで出場するという成長型ストーリーは、シカゴ・ブルズの快進撃と重ねて見ることもできた。

『SLAM DUNK』に登場する江ノ電の踏切を一目見ようとやってくる観光客は今も多い(写真提供:写真AC)

NBAと『SLAM DUNK』人気がクロスオーバーすると、それは相乗効果をもたらし、日本のバスケットボール人気はこの時期沸騰。その最中の1992年に、スペイン・バルセロナでオリンピックが開幕することになる。