イラスト:くぼあやこ
我が家のエンゲル係数基準値越え! 吉田さん(仮名・66歳)の父は、若い頃から食べることが大好き。野放図な食生活がたたって晩年、さまざまな病を発症する。最期まで、どこかにおいしいものがあると信じて疑わなかった父をおもう。

野放図な食生活で持病を抱えるように

今から4年前、87歳で亡くなった父は、とにかく食べることが好きな人だった。腕のいい板前だった父の叔父に影響を受け、料理をするのも大好き。食べることと同様に、誰かにふるまって「おいしい」と言ってもらうことが嬉しかったらしい。

ただ食費がかかりすぎるため、母はやりくりに苦労していた。私が高校生のときに、エンゲル係数を調べる宿題が出たのだが、平均からかなり逸脱していたのを覚えている。

父に比べ、母はあまり料理が得意ではなかった。父が働いている間はなんとか作っていたが、定年後は買い物と料理を父に任せるように。そもそも母は全面的に父を頼りにしていたし、父は父で、母が食べる魚の身をほぐしてあげるほどの優しさで支えていた。本当に仲のよい夫婦だったのだ。

脂っこいものも甘いものもお酒もなんでもござれの父は、確かに活力にあふれていて頼もしかったが、そういう野放図な食生活は決して健康にはよくない。退職する頃から痛風、急性膵炎、胆石と持病を抱えるようになった。痛風は投薬治療で抑えられたものの、胆石は何度か繰り返し、石を取り除く最初の手術のとき、麻酔の醒め際に父はうわ言を漏らした。

「喉に……カステラが……つかえちょる」

これには私も母も顔を見合わせて大笑い。内視鏡が喉を通る違和感から、大好物を慌てて飲みこむ夢でも見たのだろうか。