「まったく人のいうこと聞かないですけどね」
「青木さんは元々裏方が合ってるんですよ、だから本を書くのは、とてもいいです」
「わかりました。また書きます」
「まったく人のいうこと聞かないですけどね」
「聞きます」
「僕の話もあまり聞いていないですよ」
「いま、初めて聞きます」
「頑張ってください」
「はい、聞いてました!頑張ります」
片桐仁さんの相方に応募してきた候補は全部で10人。
その10組のユニットが、「やついフェス」というイベントでネタを披露し、
お客様投票で1位を決めるという企画だった。
「やついフェス」は、渋谷のライブハウスで行われた。
狭い楽屋で久しぶりに芸人さん達に会えて、懐かしく
あっという間に20年前に戻った気がした。
前日は寝つけなかった。
こんなことはなかなかないのだが、緊張しているのだと思った。
その緊張はどんどん増して、あーもうなんでやることにしてしまったのかな、
といよいよ本番の袖で待機する時には泣けてきた。
袖で、やっつんに
「自信ない」というと
「たのしんで!」
とかえってきて、すぐにステージに行ってしまった。
相方である片桐仁さんは、なんせ何組も続けてネタをやらなくてはならないのだから、袖に戻ってくれば着替えとメイクを変えている。
この時間、日本で最も忙しい男なのではなかろうか。