イラスト:角愼作
東京・上野にある国立科学博物館で開催中の特別展「植物 地球を支える仲間たち」が熱い。じっとしていて一見地味な植物たちを、総合的に紹介する大規模な展覧会は初だとか。光合成という能力を手に入れた植物たちは、実は「最強」なのでは? 

京都大学農学部を卒業、スミソニアン研究所を経て農学博士として研究を重ね、『植物はすごい』などの著書を上梓している田中修先生に、植物の不思議や進化、知られざる特徴を教えてもらった。今回は、虫や動物から毒で身を守る「ドクドク植物」の仲間から、葉も根も危険な植物と色名にもなっている花の2つをご紹介します

スイセンの葉はニラにそっくりだけど毒がある

スイセンは、雪中花という別名もある春の訪れを告げる花。「水面に映る自分の姿に恋して死んだ美少年、ナルキッソスが姿を変えた花がスイセン」というギリシャ神話に基づき、英語名はナルシサスです。

とても可憐な姿なのですが、扁平で細長い葉は、花が咲いていなければ野菜のニラにそっくり! 実際、ニラと間違えて食べてしまう人がいるのです。

しかし、スイセンの葉はニラにはない毒があります。間違って食べてしまった結果、吐き気や嘔吐などの中毒症状を起こすこともしばしばで、過去には死亡事件もありました。

この毒は「リコリン」という物質で、葉だけではなく球根部にも含まれます。

葉はニラに似ていますが、この根はノビルという食用野草に似ています。その結果、ノビルと間違えて食べた人が、中毒を起こしたケースもあるそう。つくづく、紛らわしい植物なのです。

*スイセンにはガランタミンという物質も含まれていて、アルツハイマー型認知症の治療薬に使われることも。

スイセン

【学名】Narcissus tazetta
【原産地】地中海沿岸
【特徴】葉や球根にリコリンという毒性の物質をもつ。ニラやノビルに似ていて間違えて食べられることがある。