ただし、これは森永家の場合です。遺産分割をめぐって親族が争うケースは少なくありません。介護をした証拠を残すためにも、介護にかかった諸経費や介護の行動記録をノートなどに記し、領収書を貼っておくことをおすすめします。

 

相続放棄という選択肢も

なお、18年に法律が改正され、19年7月以降開始の相続からは、私の妻のように義理の親を介護した場合、「特別の寄与」が認められて法定相続人にお金を請求できるようになりました。

幸いうちの父はプラスの財産でしたが、借金が残されていたら、本当の意味で地獄を見ることになったでしょう。その場合は相続放棄という選択肢があります。実は私も相続放棄の経験が。佐賀県にある父方の本家の相続権が私にもあったのですが、権利を放棄したのです。埼玉と佐賀を往復するだけで交通費が10万円近くかかり、家を相続したら固定資産税など維持費も発生する。自分が住むつもりがない家を持っていてもトクにならないというのが私の持論です。

ですから父のマンションも弟に譲りました。転勤族の弟はいずれ東京に戻ったら住むつもりだったものの、結局東京への転勤は叶わず、仕方なく5年後に売却することに。その間の固定資産税はまるまる損失となりました。

父の死から相続までの日々で痛感したのは、とにかく現金がいる、ということ。亡くなるとすぐに通夜、葬儀のお金を用意しなければならない。さらに相続税も原則キャッシュです。期日までに支払わないと、2ヵ月までは年利7.3%、それ以降は14.6%というサラ金なみの利息がつく。

遺産の多くが不動産というケースでは、すぐ売って利益を得ることは難しく、現金がないと相続税を払うためにローンを組むしかない。すぐに引き出せるお金の準備は必要です。

\森永卓郎さん相続での3つの教訓/

1.親の生活費、介護費の立て替えは記録しておくべし

2.相続対象となる親の財産を把握しておくべし

3.すぐに引き出せる現金を用意しておくべし