相続での失敗を糧に、現在は自身の終活に余裕を持って取り組んでいる。畑仕事が何よりの楽しみだそう(記事内写真提供:森永さん)

60代で出合った自給自足の楽しみ

もう1つの私の生きがいが農業。自分と家族が食べる分の食料は自給自足したいと思い、3年前から無農薬で野菜を作っているのですが、楽しくてね。ようやく芽が出たのに虫や鳥に食べられるし、ハプニングがしょっちゅう起こるので、知恵を絞って工夫するんです。そういうのを考えるのが面白い。手をかけて育てた野菜は美味しいですしね。大地の味がします。

私は50代の頃、睡眠不足と暴飲暴食の生活がたたって重い糖尿病と診断され、余命6ヵ月と宣告されました。それでテレビ番組の企画でダイエットに挑戦。医師の指導のもと糖質制限と筋トレに取り組み、体重を20キロ落とすことができ、体調も改善しました。

農作業ってかなりの運動量。草むしりは屈伸運動だし、鍬で土を掘りおこすと背筋が鍛えられます。おかげでその後も健康をキープできています。余命宣告されたときは自分でも「死ぬのかなー」と思ったけれど、今はまったく死ぬ気がしない。(笑)

それに所沢で畑を耕して暮らしていると、畑仲間と野菜の物々交換をして食材を買う必要がなく、お金がかからないのです。数年前に老後2000万円問題が物議を醸したけれど、あれは都会の人の発想ですよ。田舎にいたら少ない年金でも暮らせます。

コロナのような災害が起きて、物資の供給が途絶えたりすると、都会の人は不安になる。でも私は、いざというときは畑でイモを掘って食いつなげばいいと思っています。その安心感は大きいですよ。

人生の仕上げの時期をどこでどう暮らすかというのを考えるのも終活の1つだと思います。私の場合、大学の教員はおそらく73歳まで続けるでしょう。そして、もし将来要介護になったら近所のホームに入るつもり。夫婦2人が10年以上ホームで暮らせる貯金はあるので、子どもたちに相続で迷惑をかけることはなさそうです。

こうして人生のしまい支度が整ってしまえば、「B宝館」の運営と農作業という好きなことにも打ち込め、今は毎日が楽しくて仕方ありません。