「最初は面倒に思っても、いざ手をつけてみると《ああ、さっぱりした》とか、新しく買い替えて《すごく便利だわ》って嬉しいことがたくさん増えたね。」(池波さん)

同時期に大病で倒れ、母の死も重なって

中尾 自分たちの場合、片づけのきっかけは、2人がほぼ同時期に大きな病気をしたことだったな。

池波 そう、私は2006年9月に、「フィッシャー症候群」という末梢神経が痺れて手足が動かしにくくなる病気で倒れて、リハビリにもずいぶん時間がかかってしまった。その間に母ががんで闘病の末に亡くなることも重なって――。

中尾 翌年4月には、俺が「急性肺炎および横紋筋融解症」で緊急入院。志乃は主治医の先生から、生存率20%と言われたんだろう?

池波 幸い1ヵ月の入院で恢復したのだけど、その頃から自分のなかで覚悟ができたというか。先のことをちゃんと考えておかなきゃ、という気持ちになったのよね。

中尾 うちは親戚やきょうだいはいても、子どもはいない。後に残すもので周りに負担をかけたくないから、ある程度は自分たちで整理をしておくべきだろうと考えた。

池波 私はその頃から少しずつ心づもりを始めていたけれど、実際に手をつけたのはあなたの病気から6年後。片づけは体力のいることだから、ある程度は元気でないとできないでしょう。

中尾 弱ってる時期に言われたら、「おいおい、俺まで片づけるつもりか」と思ったかもな。(笑)

池波 女は現実的で打たれ強いものだけど、男の人ってそのあたり意外とセンシティブですものね。「老い先短いんだから」なんて雑な持ちかけ方をしたら、ぜったい反発されちゃうと思う。