退団1年目の頃(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
圧倒的なオーラを放つトップスターの存在、一糸乱れぬダンスや歌唱、壮大なスケールの舞台装置や豪華な衣裳でファンを魅了してやまない宝塚歌劇団。初の公演が大正3年(1914年)、今年で107年の歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」には「花・月・雪・星・宙」5つの組が存在します。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第7回は「宝塚の伝統 朝の掃除で起きた事件」のお話です

グレーの制服に、赤い蝶ネクタイ

宝塚駅を抜け、宝塚大劇場へ延びる遊歩道を「花のみち」といいます。
この道は四季折々の姿で、劇場に向かう人たちを迎えてくれます。

「花のみち」に桜が咲き誇る4月、宝塚音楽学校の入学式が行われます。

真新しいグレーの制服に、赤い蝶ネクタイ姿の新入生たち。

組長時代、歌劇団生代表として、宝塚の制服である緑の袴と紋付姿で
新入生に歓迎の言葉を述べたことがあります。

「皆様と一緒に舞台を作り上げる日を楽しみにしています」と。

入学当時の私は、このような未来が来ようとは、思うはずもありません。

ポニーテールの田舎娘は、奇跡の合格印を手にします。

そして、長年付き合ってきた長い髪とお別れし、新潟を離れ……。
人生初の連続が続きます。

同期生となる、初対面の人と同室の寮生活。
すべてが共同で、見たことも聞いたこともない、初めてだらけの日々が始まりました。

宝塚大劇場に続く「花のみち」にある『ベルサイユのばら』オスカルとアンドレ像(写真提供:越乃さん 以下すべて)