防衛大学校の授業の様子。先頭が著者(写真提供:著者)
入学すれば身分は「自衛隊員」となって毎月学生手当が支給され、4年間寮生活で平日は外出禁止になるなど、一般の大学生とかなり異なるキャンパスライフを送ることになる防衛大学校。中でも女子学生、つまり「防大女子」は1992年になって初めて誕生し、その総数も限られている。自身が女性として2007年に入校した元時事通信社記者・松田小牧氏によると、さらに卒業後に自衛隊の第一線で仕事をしている防大女子となると、かなり少ない存在だそうで――。

社会との接点が極めて限られる「防大女子」

「防衛大学校(以下、防大)の学生」と聞いてどういった姿を思い浮かべるだろうか。多くの人が想像するのはおそらく、屈強な若い男性の姿ではないかと思う。

だが、防大は男女共学であり、全学生の約一割を「女子学生」が占める。つまり彼女らこそが「防大女子」だ。かつて私もその一員であったがゆえに、防大の女子学生の認知度の低さは身をもって知っている。

「防大女子」と聞いてすぐにピンと来ないのは、その数の圧倒的少なさにも起因するだろう。

防衛大学校の2022年度の募集定員は推薦150人、総合選抜50人、一般280人の計480人で、うち女子は70人(文系20人、理系45人、総合選抜5人)と定員の約15%。

私が在学していた2000年代後半には女子の数はおよそ8%だったので、ほぼ倍増している計算ではあるが、それでもかなり少ない。ちなみに「女子が少ない」と言われている東大でも、2021年5月の時点で総数の約20%となる2768人の女子学生が在籍している。

なお、1992年に女子が初めて入校して以降、2021年に至るまでの30年間に入校した女子の総数は約1300人となる。つまり防大女子は東大女子などより、さらに数が少ない上、卒業した者の多くがそのまま自衛隊に進むため、社会との接点も極めて限られる存在なのである。

それでいて防大に入校した女子の中で、華麗に男たちを従えてバリバリ第一線で仕事をしているという者は決して多くはない。直近5年間では入校者の6分の1が卒業の前に防大を去っている。また、防大を卒業した後も、多くの者が自衛隊を離れる。

なお防大卒業生である私自身、卒業後ほどなく自衛隊を退職した。私の場合、自衛隊を好きになり、重要性を理解したうえで自衛隊以外の世界を見てみたいというポジティブな理由と、幹部自衛官としての理想像と実際の自分とのギャップに耐えきれなかったというネガティブな理由があったわけだが。