注目の的だった「女子一期生」
1992年、女子の一期生39名が入校した(通算では四十期)。防大に女子が入校するということで、入校式にはマスコミも多く集まり、彼女たちの門出を報じた。中には、通っていた大学をやめてまで入校した者もいた。
女子一期生は、「とても美人か、そうでなければとても優秀かのどちらか」と評されることが多かったという。真偽のほどは定かではないが、学生の間では「マスコミから注目されることが分かっていたので、あえてそういう人間を集めた」と囁かれていたそうだ。確かに女性初のイージス艦艦長となった海上自衛官は防大女子一期生であり、艦長就任時に「美しい」と評判になっている。
女子一期生はやはり、学内でも注目の的だったという。ある一期生は「女性が制服を着て歩いているだけで針の筵(むしろ)だった。学生舎(学生が住む寮)の外を歩いていると、学生舎の中から『ちんたら歩いてんじゃねぇ!』と怒鳴られたこともあった。ずっと珍しいものを見る目で見られていた」と振り返る。
こうした注目のされ方は防大卒業後も続いていると言い、「そんなに注目される人材でもないのに、ずっと『女子一期生』という肩書がつきまとう」と話す。
また、当初居心地の悪さを感じていたことは事実だが、「男子と全く一緒の訓練をして、信頼し合える仲間になった」とも話す。防大の大きな魅力は深い人間関係の構築にある。男女を問わない信頼関係の醸成は今も連綿と続いているが、それが一期生から達成されていたことは素晴らしい。