「中途半端」と自らを評した女子一期生

女子一期生が卒業した1996年の10月には、防大内にF・C委員会(Female Cadet施策検討委員会)が編成され、女子学生をめぐる現状の評価を行っている。

偽装して銃を構える著者(写真提供:著者)

その中で実施された教職員及び学生へのアンケート調査によると、女子一期生を「女性らしい」と評価したのは女子一期生自身で50%、その他の学生で30%前後に過ぎなかった。同委員会は「こうした意見は女子学生が『男社会の慣習』を取り込んでいることを示すもの」と指摘。男性しかいない組織の中で適応しようとする、アンビバレントな防大女子のありようを窺い知ることができる。

前述の一期生自身も「女性らしくありたいと思ったことはなかったけど、男子学生に指導されたからといって、自分は男っぽくもなってないし、男っぽくもできなかった。中途半端な存在だった」と話す。

「女性の指導を受けたことのない防大女子」というのは、少し異質な存在であったようだ。

女子一期生に指導された四十期代前半の者からは「四十期は女性から指導されていなかった点が一番のウイークポイント」などと指摘する声もあった。

「言葉遣いが男口調で、でも怒り方はネチネチと怒るところがあって、違和感があった。四十期は女性から怒られてないから、自分がそういう風になっているということにも気付けなかった。あと『男に負けるな』という思いが強くて、男の人が描くリーダー像に沿おうとしてると感じていた。四十一期以降は『とはいえ、男と女は違うでしょ。自分の考えでいこう』といった感じだったので、組織は四十期を評価し、四十一期以降は頼りないと思われていると感じていた。四十期は背負っているものが大きかった」

そんな女子一期生39名のうち、卒業前に防大を去った人などを除き、27名が任官した。

先のアンケートによると、女子学生制度の導入については「よい」と答えた者が約60%、否定的に捉えた者が約30%。よい影響が出ているところは一に勉学、二に校友会活動(部活動に当たる)であり、悪い影響は一に生活面、二に訓練面に出たという。

加えて示された「現状」では、「女子の入校時の学力は平均的に男子より上位にあり、入校後の成績も男子よりやや高い。体力は同年代の全国標準より高く、体力の伸びは男子に比べて顕著だが、約10%は到達基準に届いていない。訓練は一応の成果を収めている。訓練班の編成は男女混合だが、女子に配慮して訓練レベルを下げざるを得ないので男子の訓練意欲が低下するとの批判が一部にあった」ということも明らかにされた。このアンケートの結果は今も大差ないのではないだろうかと感じられる。